第20回

トリマー業界の昔と今

2016年7月19日

今回はペットサロン・ホテルに関わる人が安心して働ける環境作りを目指す業界団体、非営利一般社団法人 日本ペットサロン協会にご協力いただき、協会理事の中島先生、およびペットサロン業界の最前線で活躍するお二方を招いて座談会を開くことができました。将来ペットサロン関係の職を目指す若い皆様に、業界の現状や将来についてお伝えします。

対談者プロフィール

中島
中島 秀輔(なかじま・しゅうすけ)
ワンズアップ株式会社 代表取締役
日本ペットサロン協会理事
シモゾノ学園 美容教育アドバイザー
1986年、株式会社ジョーカー入社後、関東を中心としたジョーカー店舗の店長を歴任。2005年からは本社、店舗統括部部長に就任し、多くの店長ならびに後進の指導にあたる。2012年、同社を退社し、ワンズアップ株式会社を設立。店舗コンサルティングやペット系専門学校等の講師として指導に携わる。JKCトリミング競技会において数々の賞を獲得し、テリア種トリミングのエキスパートとして活躍中。
>>ワンズアップ株式会社
根本
根本 裕介(ねもと・ゆうすけ)
ペットハウスシアンシアン 代表
日本ペットサロン協会 トリマーアンバサダー
2000年に青山ケンネルカレッジを卒業し、2005年、東京足立区にペットハウスシアンシアンを開業。オーナートリマーとして活躍中。2005年5月、TVチャンピオン 第3回ペット屋さん選手権で準優勝を獲得、2015年ジャパンペットフェアドッグスタイリストショー優勝。犬だけでなく猫のトリミングなど、プロトリマー向けセミナーも全国各地で開催している。
>>ペットハウスシアンシアン
森部
森部 暢章(もりべ・のぶあき)
株式会社D09 代表取締役
日本ペットサロン協会 会員
1984年、大分県生まれの若手経営者。2007年に国際動物専門学校を卒業、就職したトリミングサロンを譲り受ける機会があり、経営者となる。23歳で世田谷区千歳船橋にPeace Dogs furifuriをオープンし、31歳で2店舗目となるvividを渋谷区参宮橋にオープンさせる。現在は、開店資金で借り入れた4,500万円を返済しながら、「日本一トリマーが幸せな会社」にすべく奮闘中。趣味はサーフィン、新日本プロレス、オリックスバッファローズの試合観戦と幅広い。
>>Peace Dogs furifuri>>vivid

憧れの動物業界に飛び込んだ学生時代

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下薗:非営利一般社団法人 日本ペットサロン協会とシモゾノ学園は親しい関係を築かせていただいており、今回4名での座談会となりました。学園としては、若い方々にトリマーという職に対して憧れを持っていただき、また進んだ道を振り返ったときに「選んでよかった!」と感じていただくための道を切り開いていきたいと考えています。そこで、この道の先駆けとして進んでいらっしゃるお三方をお招きして、お話をお伺いする機会とさせていただきました。 それでは、トリマーの道に進まれた動機と経営されている会社について教えていただけますでしょうか。

森部:ずっと犬を飼育したくて、ついに20歳のときに犬を連れて帰った経験がありました。そこで「犬はかわいいな」とあらためて感じ、将来は犬の仕事をしていきたいと心に決めました。そして国際動物専門学校に入学し、2年間学びました。

下薗:学生時代を振り返ってみて、印象に残っているエピソードはありますか。

森部:みんなで行った国内研修旅行が楽しく印象的でした。

下薗:あの研修旅行は楽しいですよね。今でも学生が心待ちにして楽しんでくれているイベントです。根本さんが通っていた青山ケンネルカレッジ時代から引き継いでいるものなのです。

森部:長く続いているイベントなんですね。 私は、世田谷区千歳船橋で「Peace Dogs furi furi」、渋谷区代々木に「Vivid」というトリミングサロンを経営しています。

下薗:大活躍の卒業生ですね。 それでは本学園の母体である青山ケンネルカレッジを卒業された根本さん、お願いいたします。

根本:足立区大谷田で「ペットハウス シアンシアン」を経営しています。この業界を選んだ理由は、子どものころから動物が大好きで、大人になったら動物の仕事をしようと考えていました。小学校入学直後、1年生のときの文集に「ペットショップの店長になる」と書いていました。当時はオーナーという存在を知らず、「店長が一番偉い」という子どもならではの思考であったのですが、地元の同窓会で現在の仕事を旧友に伝えると「夢を叶えてるね」と言われることがあります。

下薗:本当に叶えていますもんね。

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根本:はい。高校を卒業して青山ケンネルカレッジに入学し、トリマーを1年間とドッグトレーナーを2年間勉強しました。ドッグトレーナーになろうとも考えましたが、トリマー業界は男性が少なく、これからのトリマー業界に男性の風を吹き込もうと考えました。

下薗:まさに新しい風を吹き込んでくださっています。

根本:青山ケンネルカレッジでは高校までとはちがって、まわりがみんな動物が大好きな人たちでした。だから考え方も近く、共通の興味があるということで、とても楽しい時間でした。

下薗:私もいつもそう思います。毎年、新入生をお迎えしますが、みなさん動物が大好きです。入学式にシモゾノ学園の新入生が集まると、特にその力強さを感じます。 それでは中島先生、お願いいたします。

中島:現在、日本ペットサロン協会の理事を担っており、ペットサロン専門のコンサルティング会社「ワンズアップ株式会社」を経営しています。ペットサロンやトリマー育成教育機関など、業界の中で必要とされていることに対し、自分自身の経験を活かすことができるのではないかという思いで設立しました。約30年前にトリマー教育機関で2年間勉強し、そこから27年間、大手ペットショップで働いていました。新人時代はトリマーとして、また販売員として勤務し、入社3年目で店長に抜擢されました。その後は店舗統括という立場で、店長を指導する側も経験し2012年に退社、今に至ります。

下薗:長い経験をお持ちでいらっしゃいますよね。

中島:そうですね。この業界に入った動機はお二人と似ています。小さいころから犬が好きでしたが、飼育したくてもそれが叶わない環境でした。その反動か、中学校の卒業アルバムでは「将来は犬屋さん」と書きました。そして高校を卒業して専門学校に進みました。少し動機が不純なのですが、地元を離れて東京に出たい、どうせ出るなら女の子が多い環境がいいなと考え、トリマーの道を選びました(笑)。当時は男性が少なく、40数名のクラスで男性は1割ほど。今もあまり変わってないのかとも思っています。

下薗:本学園でトリマーを育成している美容・デザイン学科でも、男女比率は変わりませんね。

中島:そうですよね。その中で、男性でも活躍していける職種にしていかなければという思いで、我々が集っています。森部さんや根本さんは経営者としてこれからの店舗展開を考えている方々です。後進の目標となります。

下薗:そうですよね。

中島:日本ペットサロン協会としては、このようなトリマーさんの活躍を助けるような保険や経営に役立つようなものを提供していきます。学校と職場をつなぐ関係も担い、学校で学ぶことと実際の現場をつなぐ一助になればと思っています。

下薗:みなさんは動物が好きで、幼いころからの夢を叶えた方々ですよね。私は青山ケンネルを家業に持つ家に生まれ、子どものころから動物業界の一員でありました。今、学生や高校生にお話をするときには、この人生にまったく後悔はないと伝えています。特に犬と共に育ってきた環境、過ごしてきた時間を誇りに思い、ここから活力をたくさんもらっています。
 1956年の青山ケンネルの開業当時から約60年、当時は「犬屋さん」と呼ばれ、現在のペットショップへと続く中で、この業界は本当に大きく様変わりをしています。また、もっとよい方向に変わっていってほしいと思うこともあります。日本ペットサロン協会の設立は、その点に大きく期待できると感じています。中島先生をはじめ、根本さん、森部さんのようにこの業界を切り開いてくださる方々がいて、その体制が整ったということに、新しい風が吹いたなと感じています。これからの日本ペットサロン協会の活躍が、日本のペット業界をさらによい方向に変えていくと楽しみに思っています。

IAC