第21回

日本・アメリカ 動物看護の今

2016年12月19日

今回はアメリカの動物病院で、集中治療室部門と血液バンク部門のマネージャーとしてご活躍されている動物看護師の八木懸一郎先生をお迎えし、シモゾノ学園の男性動物看護師教員との対談をお送りします。アメリカの最先端の獣医療についてや、動物看護師という職業が現在どのような位置づけであるのかなど、興味深いお話をうかがいました。

対談者プロフィール

八木
八木 懸一郎(やぎ・けんいちろう)
アメリカ合衆国カリフォルニア州Adobe Animal Hospital
集中治療室部門・血液バンク部門マネージャー
幼少期からアメリカで生活を送り、動物病院Adobe Animal Hospitalで集中治療室部門と血液バンク部門のマネージャーを務める動物看護師。近年では日本での動物看護師関連の講演にも参加し、動物看護師の職業向上へ向けた活動に意欲的に取り組んでいる。
新國
新國 太朗(にっくに・たろう)
学校法人シモゾノ学園大宮国際動物専門学校
認定動物看護師・動物看護教員
動物病院勤務を経てシモゾノ学園の教員となる。
エキゾチックアニマルが専門分野。
赤谷
赤谷 拓海(あかたに・たくみ)
学校法人シモゾノ学園国際動物専門学校
認定動物看護師・動物看護教員
動物病院勤務を経てシモゾノ学園の教員となる。
国際動物専門学校動物看護・理学療法学科卒業
池田
池田 瞬(いけだ・しゅん)
学校法人シモゾノ学園国際動物専門学校
認定動物看護師・動物看護教員
国際動物専門学校動物看護・理学療法学科卒業

4名の動物看護師はどのように生まれたか

1

下薗:この度はナルホド対談にお越しいただきありがとうございます。今日はアメリカでご活躍されている動物看護師の八木先生をお迎えし、シモゾノ学園の男性動物看護師教員も一緒に対談をさせていただきます。よろしくお願いいたします。まずは八木先生、簡単に自己紹介をお願いいたします。

八木:僕はカリフォルニア州のロスアルトスで、Adobe Animal Hospitalという動物病院で働いており、ここでの勤続年数は、16年になります。その前にペンシルベニアで約1年間動物看護師として働いていました。今は集中治療室(ICU)と輸血バンクのマネージャーをしています。
 Adobe Animal Hospitalは、獣医師が30人、動物看護スタッフが80人ほどいる、カリフォルニアの中でも大きな動物病院です。一般の動物病院診療と救急医療の24時間体制で運営しています。獣医師によっては得意分野、専門分野があり、知識として多くのことを吸収できます。勤務人数が多いおかげで、意見の交換もよくできて、どんどん環境は良くなっています。
 ICUのマネージャー以外でも、専門動物看護師の資格として救命救急と小動物の内科の資格を持っています。その資格を持っているおかげで、外に出て講義をしたり、医療を良くするためのプロジェクトにも参加できるようになったり、最近ではアメリカ、イギリス、カナダなどでの講演の依頼を受けたり、このような対談をするために日本へ来ることができるようにもなりました。近年のアメリカでは職業の発展が課題となり、そちらにも力を入れるようになって、NAVTA(National Association of Veterinary Technicians in America)という団体とも一緒に活動しており、それを始めて約2年になります。

下薗:そもそもアメリカに移られたのが6歳のときとおうかがいしましたが、それからずっとアメリカでの生活をされていらっしゃるのですね。

八木:はい、そうです。

下薗:長くお住まいなんですね。
 では最初の質問です。どうして動物看護師を目指そうとお考えになったのですか?最初から動物看護師になることを目指されていたのですか?

八木:実は最初から動物看護師になろうと決めてはいませんでした。高校を卒業するときに、どのような進路に進むか決めなければならなくなって、それまでは進路に関してまったく考えていませんでした。あまり良い生徒ではなかったので(笑)、強制的に勉強させられているという気がしていて、おもしろくなければやる気が出ないという思いもありました。そうやって考えているうちに動物に対しての医療はおもしろいのではないかと思い、獣医師になるための勉強をして、獣医学校に入りました。
  1年くらい経った頃、そのときすでに大学内での遺伝的な病気を研究している施設で動物看護師としての仕事をしていたのですが、授業を受け勉強しているときよりも、そこで犬猫の看護・治療している方が楽しいと感じ、何のために勉強しているのかを考え、そこで一旦休学をしました。でもそこで獣医療をあきらめるつもりはありませんでした。少し休み、また勉強する気力を取り戻し、獣医師になるための勉強をきちんと終わらせようと思っていました。ですが、その間に現職場のAdobe Animal Hospitalが見つかり、そこで動物看護師として働くようになりました。
 そこで働くことを決めたのは、その病院を創設したルース先生という獣医師に色々教わりながら一緒に働くことが楽しかったからです。
 ある日、鎮痛に関する教育セミナーで講師のナンシー・シャッフランさんという方に会ったときに、ルース先生が僕のことを「獣医学校に通っていたが、それを辞めて、今は動物看護師として働いている」と紹介しました。なんという紹介の仕方をするのだと思いました(笑)。その紹介を聞くと、ナンシーさんは「動物看護師の仕事は好きか?」と尋ねてくれ、「好きです」と答えると、「じゃあ動物看護師の資格を取れ」と助言をしてくれました。その後、助言通りに資格を取りました。
 「動物看護師の仕事は好きか?」と聞かれて、「好き」と答えたときに、ああ自分はこの仕事が好きなんだなと実感しました。動物一頭一頭に対して、自分で直接何かができるということが楽しいのだと知り、その後に専門動物看護師にもなりました。
 最近ではマネージャーをやっているので、人材育成やICUの管理について力を入れています。直接、動物の看護をすることは少なくなってきていますが、周りがそれぞれの役割をより良く果たせる状況を作れるように意欲を注いでいます。

1

下薗:偶然なる出会いがきっかけでこの道に進まれたのですね。では次に、シモゾノ学園の男性動物看護師をご紹介させていただきます。経歴と仕事のやりがいをお話しください。ではまずは新國先生からどうぞ。

新國:はい、新國と申します。私はまず5年間、犬猫の一切いない、エキゾチックアニマルを専門とする動物病院で働いていました。そんな中で、動物看護師の集まりがあり、そのときにシモゾノ学園の講師と出会い、教員の道に進もうと決意し転職、現在4年目になります。
 私も八木先生同様、はじめは特に動物看護師を目指しているというわけではなかったのですが、高校を卒業する頃に、飼育していた動物を病院に連れて行き、獣医師と動物看護師を見て、こういう仕事があり、動物看護師も動物と関わって、動物の命を助けられるということを知りました。そこから動物看護師の道に進もうと決めて専門学校に通いました。
 動物というと、最初は犬猫がメインだと思っていたのですが、実習先がエキゾチックアニマルだけを診療するという病院で、そこで初めて犬猫以外の動物も病院に来るんだということを知りました。正直なところ、専門学校時代は犬猫のことだけを学んできたので、エキゾチックアニマルは未知の世界で、飼育方法がわからない動物は一からの勉強となりました。
 働くようになってから勉強がすごく大事なことであると身を持って知ったので、学生には、「大変かもしれないけれど、今しっかり勉強しておかないと就職してから苦労するよ」と伝え、指導をしています。
 担任の教員としてクラスを受け持っているので、動物業界に教え子が就職してくれることが今の私の生きがいです。また今年も動物業界に羽ばたいていく姿を見届けることが楽しみです。

八木:勉強って大事だなと思うのは、僕も同じです。高校を卒業するまでは勉強は嫌いでしたが、自分でやりたいと思ったことを勉強することで、モチベーションも出てきました。

新國:なかなか学生のうちは、動物は好きだけど勉強となると嫌だな、面倒だなと思いがちです。でも働いてから勉強してきたことが本当に大事になるので、その基礎を身につけるために学生のうちからしっかり勉強する癖をつけて欲しいと、身に染みています(笑)。

下薗:勉強は大事ですね。では続いて、赤谷先生お願いします。

赤谷:はい、赤谷と申します。私はシモゾノ学園国際動物専門学校出身で、卒業後に動物病院で働いた後、大木先生というこの学園の獣医師の先生に紹介してもらい転職、今は教員として勤務しています。
 この業界に入ろうと思ったのは、もちろん動物が好きというのもあるのですが、昔飼育していた動物が病気になり、動物病院で治療してもらったときの姿に感動したからです。獣医師さんもすごいなと思ったのですが、動物看護師さんもすごくテキパキと対応していて、また、飼い主である私への指導の仕方もとてもわかりやすかったので、自分もその人のような動物看護師になりたいと思い、この道を選びました。
 知識を学生や他の人に教えることが好きなので、今は教員としてとても有意義に満足して働いています。この学校には動物看護・理学療法学科という動物のリハビリテーションを学ぶ学科もあるので、そちらの動物看護師の仕事も一緒にやらせていただいています。

下薗:教員研修として毎月、動物病院に行っていますよね。

赤谷:はい、月に1回ほど埼玉県にある「アニマルクリニックこばやし」という動物病院に勤務する、人と動物の両方の理学療法に携わっている先生の下で勉強をさせてもらっています。

下薗:ありがとうございます。次は赤谷先生の後輩にあたります、池田先生です。よろしくお願いいたします。

池田:はい、池田と申します。私も赤谷先生と同じくシモゾノ学園国際動物専門学校の動物看護・理学療法学科で3年間学び、担任の先生から、教員として働くことを提案してもらい、就職しました。
 学生目線に立ち、こういうところはしっかり勉強した方が良いと自分の経験を活かし伝えることができ、やりがいを感じています。

下薗:はい、みなさん、ありがとうございます。

IAC