第22回

動物介在教育とは-子どもと動物との共生-

2017年7月30日

今回のナルホド対談では、2003年より立教女学院小学校で動物介在教育を実践されている吉田太郎先生をお迎えしました。子どもたちと学校犬との学校生活の様子など、教育現場での愛と情熱にあふれる吉田先生のお話をたくさん伺いました。

対談者プロフィール

吉田 太郎

吉田 太郎(よしだ・たろう)
立教女学院小学校 教諭(教頭、宗教主任)。
1973年、京都府長岡京市生まれ。
同志社大学神学部卒業、同大学院歴史神学専攻修士課程修了。
塾講師、高等学校教諭を経て、
1999年、立教女学院小学校教諭(宗教主任)。
2003年より、エアデール・テリアのバディとともに、子どもたちの教育に犬を介在させるプログラム「動物介在教育(Animal Assisted Education)」をスタートさせる。
2013年4月、立教女学院小学校教頭。
2015年1月26日、初代学校犬のバディが天寿をまっとう。
現在の学校犬は、福島から引き取ったウィルとブレス。
そしてバディの姪にあたるベローナ。
2016年からはアイメイト協会の繁殖奉仕犬クレアの4頭。
著書に、
『子どもたちの仲間 学校犬「バディ」』(2009年、高文研)
『ありがとう。バディ』(2015年、セブン&アイ出版)
『奇跡の犬、ウィル』(2016年、セブン&アイ出版)
『学校犬バディが教えてくれたこと』(2016年、金の星社)
がある。
ブログ『動物介在教育の試み 立教女学院小学校で活動する学校犬バディのフォトブログ』
http://blog.livedoor.jp/schooldog/

動物介在教育をはじめたキッカケ

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下薗:以前から吉田先生のご活動は、テレビや著書を通じて存じ上げていました。動物が、特に犬が子どもたちの成長に必要だということを感じているのですが、今まではそれを学校という組織で実践されていなかった中、御校で取り組んでいらっしゃることに大変興味を感じております。まずは、動物介在教育を始められた経緯を教えていただけますでしょうか。

吉田:キッカケは2つあります。1つ目は、当時いわゆる不登校のお子さんがいて、その子を引きこもっている状態からなんとかして外へ出そうと考えた時に、ただ「学校においで」だけでは、なかなか来られないので、お母さんとも作戦を考えて、近くの井の頭公園に、私が当時飼育していた愛犬スコッチ・テリアを連れて「犬のお散歩に行こう」と誘いました。
 ありがたいことに、犬のお散歩を経て、そのお子さんはようやく放課後のグランドまで来られるようになったんですね。その子が、「学校に犬がいたらいいのになぁ」ってつぶやいたので、「じゃあ、学校に犬がいられるようにしてみよう」というのが1つ大きなきっかけでした。

下薗:なるほど。もう1つはどんなことでしょうか。

吉田:2つ目には、私は聖書科(キリスト教の授業・公立小学校では道徳)の授業を持っているのですが、教室のプラスチックケースの中で飼っていたバッタが死んで、私のところに「お葬式をしてください」と子どもたちが持って来たんですね。それでお葬式を中庭で執り行い、埋めてお祈りしました。
 その時は、バッタに対してもやさしい気持ちでいいなと思ったんですけど、それ以降、次の日も次の日も、死んだ昆虫を持ってきては「お葬式をしてください」となり、これは命の大切さとか、リアルさというのは伝わっていないんだなと感じました。だったら温もりがあって、存在感がある動物をみんなで飼育するプログラムができないかなというのが行動を起こすキッカケとなりました。

下薗:そうでしたか。始めるにあたり、海外での情報も参考にされたのでしょうか。

吉田:当時、IAHAIO(人と動物の関係に関する国際組織)がブラジルのリオで行った大会で動物介在教育のガイドラインがちょうど出されたころだったんですね。その文献を見せていただいて、ガイドラインに沿った動物であれば、学校で犬を飼育しているところはないけれども、当てはめていけば私にもできるのではないかというのが後押しとなりまして。

下薗:先生の愛犬スコッチ・テリア等ではなく、エアデール・テリアを中心にして実施されましたが、犬種の選定はガイドラインに基づいたものですか。

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吉田:はい。ガイドラインの中で、衛生的、アレルギーフリーというのがありましたから。最初は、ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーなどの犬種イメージを持っていましたが、彼らは毛が抜けるじゃないですか。
 いろいろな犬種の場合を想定した中で、エアデール・テリアに決めました。でも、いちばん最初は馬にしようと思っていたんですよ。

下薗:動物介在教育において、馬での活動もありますものね。馬の方が、先に進んでいますし。

吉田:さすがに小学校で馬を飼育したいという提案は、無理だろうなと。馬の知識もないし、費用もかかるので。犬であれば、費用も10分の1なので、エアデール・テリアにしました。
元々、エアデール・テリアという犬種には興味がありましたし。

下薗:なるほど、そのような経緯があったのですね。原点に戻りまして、先生が小学校の教諭を選ばれたのは、どうしてですか。

吉田:小学校の時に、すごく影響を受けた大好きな先生がいて、その先生に対する憧れみたいな気持ちが最初のキッカケです。それと同時にキリスト教の牧師になりたいという気持ちもあったので、牧師なるか、教師になるか、どうしようかと悩みながら学生時代を過ごしてきました。

下薗:今のお立場はそれが両立できますものね。

吉田:ちょうど真ん中でちょうどいいかなと。

IAC