学校法人シモゾノ学園の理事長兼校長。動物が生きる喜びをかみしめることができる社会、人と動物が本当の意味で共存共栄できる社会を目指す愛犬家。
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第23回川嶋 舟氏
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第22回吉田 太郎氏
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第21回動物看護業界座談会
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第20回ペットサロン業界座談会
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第19回柴内 裕子氏
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第18回有馬 もと氏
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第17回土居 利光氏
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第16回動物看護師統一認定試験についての座談会
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第15回小倉淳氏
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第14回山田かおり氏・金井寛貴氏
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第13回平野井浩氏
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第12回災害動物救援ボランティア座談会
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第11回小森伸昭社長
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第10回増井光子先生
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第9回森裕司教授
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第8回山口千津子先生
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第7回松本壯志先生
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第6回西川文二先生
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第5回小林節先生
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第4回中嶋宏一社長
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第3回瓜生敏一社長
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第2回動物看護師の国家資格化に向けての座談会
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第1回山根義久先生
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好きなことをしていると一生働く必要はない
下薗:池田先生、続けて八木先生へ質問はありますか?
池田:はい、アメリカでの動物看護師の女性と男性の割合をお聞きしたいです。
八木:割合は確かな情報があるわけではないのですが、大体10%ぐらいが男性で、90%ぐらいが女性です。
男性が少ないのは、収入が低いという点が一番の理由だと思います。そのため、家族を養うために就く職業と見られていなかったのだと思います。また、二次的な収入としてやりがいがある動物看護師を仕事として選択する女性が増えたことも、このような比率であることの一因だと考えられます。ですが、過去5年、10年から考えると、最近になってちゃんとした職業だと見られるようになってきて、学校に通ってこの職業に就く人が増えてきています。病院で働くだけではなく、その他に色々と役に立てることもありますし、動物看護師としてできることは本当に多いです。そういうことが認知されてきているからこそ、さらに就業者が増えているというのもあります。
池田:そうなんですね。加えて男性動物看護師の将来性についてはどうでしょうか。
八木:男性として特別に将来性があるというわけではないと思いますが、ちゃんとした職業だと見られているから、誰でも男性・女性のどちらでも対等に働ける仕事になっていると感じます。
下薗:初めはアメリカでもそんなふうに周りからは捉えられていたんだと感じましたし、それなら日本もやればできるということがわかった気がします。どのようにして専門職として確立できるようになったのでしょうか?
八木:もちろん職業に就いている人たち自身の努力もあったと思います。それもありますが、最近になって、獣医師の方からもサポートしてくれる姿勢が多く出てきているんですね。そのうちの一つとして、大学病院でも動物看護師の役割というものがちゃんと作られていて、そういうチーム構成に慣れてきている獣医師が増えてきています。獣医療が複雑になるにつれて役割を分けておかないと効率がものすごく悪くなって、獣医師も自分の仕事ができなくなってきたので動物看護師が必要であるとほとんどの人がわかってきています。
例えば、最近の獣医師にとっての問題として、学生時代の学費のローン返済がものすごく多くあるとか、仕事の時間量が多くて鬱病になる人たちも多くいたりすることがあります。自殺率も獣医師の方が人間の医師と比べると4倍も高いんです。
一同:へえー!
八木:動物看護師も獣医師と同じような仕事に就いていて、同じような時間帯に働いていて、同じように学費ローンの返済があって、それなのに収入が低いという問題が出てきています。そしてだんだんと動物看護師も獣医師と同じなんだということが理解されるようになってきました。状況をわかってくれて、味方についてくれる獣医師が多くいるんですね。理解して味方になってくれる人というのは日本にもたくさんいると思うので、そういう人たちと一緒にこれからどうしていくべきか、相談をすることは重要だと思います。
下薗:そうですね。ありがとうございます。それではこの男性動物看護師3名にエールを送っていただけますでしょうか。
八木:はい。僕も仕事内の役割として、パートタイムで近くのFoothill Collegeという学校で動物看護師の養成プログラムの講師をしています。なので、お話をしていてみなさんと同じように感じるところはたくさんあるんですよ。やりがいをものすごく感じますし、なるべくおもしろく、興味が湧くように説明して、役に立つ情報をあげたいなと思う気持ちも一緒です。動物看護職の未来を育てているところなので、本当に役割としては重要だと思います。がんばってください。
下薗:ありがとうございます。では最後に、シモゾノ学園の学生に、またこれから動物看護師を目指そうと考えている学生にメッセージをいただけますか。
八木:知識を身につけたり実践したりと、忙しく、休む暇もなく勉強に追われて辛いところもあると思うんですけど、動物に対しての看護というのは本当にやりがいがあるものです。経験を積んで、インターンシップも良い所を探して、自分の好きな動物看護の分野を見つけてほしいと思います。“やっていける”ではなくて、“やりたいことだ”という気持ちを自分自身で確認しながら、やりがいを見つけてください。
それから先日行った講演のときにも言ったのですが、英語で“Do what you love, and never work a day in your life”というフレーズがあります。この言葉は「好きなことをやっていると、一生働く必要はない」という意味なんです。「自分が好きなことを、自分がやりがいと感じていることをやれば、それは働いているのではなくて人生を生きているだけだ」ということです。そういうふうになれるようにがんばってください。
下薗:すてきな言葉ですね。仕事だと思うと辛くなることもあるかもしれませんが、自分の生きがいでやっているんだと思えばなんてことはないかもしれませんね。今日は色々なことを教えていただき、これから伸びていくヒントをいただけて楽しかったです。ありがとうございました。