学校法人シモゾノ学園の理事長兼校長。動物が生きる喜びをかみしめることができる社会、人と動物が本当の意味で共存共栄できる社会を目指す愛犬家。
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動物園に来て、動物たちの生態を知ってほしい
下薗:以前、どこかで土居先生がお話されていた内容で印象に残っていることがあります。
「動物園に来て、その動物たちの生態を深く理解し、動物が本来生息する場所をよく知ってもらいたい」というお言葉でしたが、まさに今おっしゃられたことなんですね。
土居:まさにその通りです。
パンダも同じくです。パンダは絶滅危惧種ですよね。「かわいい」と関心をもってもらえることは得ですね。
人間もかわいい方が得ですから、私も男の人に「かっこいい方が得だよね」なんて、ときどき言ったりします(笑)。
下薗:パンダは本当にかわいいですよね。
先ほどパンダ舎を見たときには下を向いて寝ていましたけれど…。
土居:パンダは子どもに似ているそうです。
子どもは頭が大きくて、座り方も子ども座り。本当はお尻で座っているわけではなくて、背中で座っているのです。実際は手に引っかけて食べていますが、手でつかむようにして食べているように見えますよね。人間の子どもによく似ています。だから白黒の色だけでなく、しぐさや体型も含めてパンダのかわいさとなっているようです。
下薗:なるほど!
「かわいい」の理由は人間の子どもに似ているという点にあったとは驚きです。
でも、とても納得です。
土居:パンダも絶滅危惧種ですが、もともと肉食だった食性を竹に変化させていった。餌となる竹がふんだんにあったため、竹に特化していくことが、パンダの進化の中の生存戦略となったわけです。
もし竹が消滅してしまったり、なんらかの人為的な破壊があると、パンダは一気に絶滅してしまうでしょう。すべての動物は、そのような進化の道をたどっています。
ところが人間はちがいます。ちがう進化の道をたどっています。文化というものを作り、言語能力を駆使して抽象化し、環境を克服することで、自分たちの環境を変えながら進化してきました。この部分が動物と人間の決定的なちがいです。
下薗:動物の展示スペースに掲示がありますよね。
掲示物を読んで、ふむふむと勉強させていただくことがとても多かったのですが、先生のお話にありましたようなことを一般の方々に知ってもらうための取り組みは、園内では積極的になされているのでしょうか。
土居:もちろん、取り組んでいます。
ところが問題もあります。みなさん、全部は読まないのです。
下薗先生はすべて読まれましたか?
下薗:私は興味があるので、すべて読んだのですが…。
土居:それは、その分野にいる方だからですよ。
下薗:たしかにそうかもしれません。
土居:一般の方は、まず読まないのです。ただ、読まなくてもいいと思っています。なにかのきっかけで知ってもらうことができればいいと考えていますから、そのために地道に取り組んでいく。先ほどの話のように、自分が関わっていると思わせない限り、真剣には読んでくれないのです。だからこそ、関わらせる仕組みを常に作っていく工夫を我々はしていかなければなりません。
下薗:それは一般の方だけでなく、きっと職場でも同じことが言えますよね。
土居:その通りです。
動物についての紹介マニュアルを作る際、いつも疑問に思うことがあります。
動物の名前のほかに、学名が書いてありますよね?学名をきちんと読む人はどのくらいいるでしょうか?動物園の園長を務めている私でも、学名を知っている動物は、実はわずかです。その程度の認識のものであるにもかかわらず、わざわざ学名が書いてあり、「絶対に学名を載せなくてはいけない!」という雰囲気に「どうしてだろう?なんのために作っているのだろう?」と考えてしまうわけです。
下薗:そうですね、相手がいかにその情報をキャッチできるかということを念頭に入れておかなければいけませんね。
土居:だから私は、作り方を変えたらいいと思っています。一番下に、参考として載せる程度でいい。