家族の一員としてのペット

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小倉:最初の子は、彼(小倉氏のご子息、慎之輔さん)が8歳の時に、兄弟がわりになるといいね、という意味を含めて飼ったのです。たまたまうちの妻の同級生のお父様が獣医さんで、紹介いただいたのですが、あんなにやんちゃだと思いませんでしたね。

下薗:あっ、そうでしょうね。

小倉:ちょっと出かけて帰ってきたら、うちのソファに丸く穴を掘って、その中に収まって「何?」みたいな顔していたりして。ソファを4脚だめにして、ダイニングチェアを4脚だめにして、あと、ホットカーペットを7~8枚だめにして。柱にも噛み跡があったしな。
彼(慎之輔さん)は小さい時に、犬舎に彼の方が入ってそこで宿題をやっていましたから。

下薗:(笑)そこじゃないと、落ち着かなかったですか。

慎之輔:ホントはちょっと怖かったんです。

小倉:ラブラドールって大きいじゃないですか。彼はちびだったので。それで犬舎に入って宿題をしていると、周りをまるでオオカミがエサを求めるように回ってたよな。でも出れば楽しく遊んでもらったもんな。

下薗:ほんとうにラブラドールは、人間に一番近い犬かなと私も思いますね。ラブラドールだからこそ盲導犬などにも抜擢するのだと思います。だから反対に盲導犬として頑張れるラブラドールは、ちょっと人間が抑圧をさせてしまっている。

小倉:そうかもしれないですね。亡くなった後に、盲導犬をリタイアしたワンちゃんを預かるのはどうかって話も、妻としました。まだそんな気持ちになれないと言っている時期だったのですが、そういうふうなこともやれたらいいね、と。

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下薗:うちの学園の教頭で獣医師の山下という者が、盲導犬のリタイア犬を二頭引き受けて、二頭とも出来る限りのことをしてあげて、見送ったのですが、彼女は、またリクエストしているらしいですね。ただ、結構順番待ちだそうですよ。やっぱりしつけができているから、飼いやすいというのがあるのでしょうね。
逆にパピーウォーカーは、手塩にかけて育てた子と別れるじゃないですか。私にはあれはとても辛くてなかなかできないな・・と思ってしまいます。

小倉:そうですよ、せっかく家族になってなじんだところで、「行っておいで」っていうのはね。

下薗:厳しいですよね。でも盲導犬として落第になると、訓練施設には預けることができないので、自分で飼うそうです。 現在、東日本盲導犬協会の協力の元、幣校の山下が代表となり、現役の盲導犬をケアしようというプロジェクトを、プライベートで立ち上げております。やはり現役の盲導犬を、育成しようとか数を増やそうという運動や募金は結構ありますけど、盲導犬をケアするという視点はあまりないのです。
それを獣医師として、ワクチンや健康診断など、サポートしに行っております。本来なら人間がすべき視覚障がい者に対するケアを、犬が代行してくれているわけです。どちらかというと陽気なラブラドールという犬種を、少し抑圧して歩かせるのは、結構難しいことではないかと思います。

小倉:プレッシャーもあるでしょうしね。

下薗:はい。だから一生懸命ケアしてあげられればいいと思うのです。盲導犬の訓練士の方々が「ハーネスを外せば普通のペットとして皆さんかわいがってくれていますよ」と皆さんがおっしゃるので、それをお聞きしたときにはホッとしました。

小倉:なるほどね。僕がいつも行くスポーツクラブ、大体同じ時間に前を通ると、お仕事中って書いた盲導犬と一緒に歩いて来る女性がいらっしゃるんです。その人は普通にハーネスをつけて歩いてはいるのですが、信号で止まった時のかわいがり方はね、すごいですね。愛しているんだな、っていう感じです。

下薗:皆さん、そういう風になってくださるみたいですけれどね。やはり犬が怖かったり、苦手だったり、っていう方はには適応できない。

小倉:ああ、そうか。皆さんがみんな、犬がお好きってわけじゃないですからね。

IAC