被災動物たちの行方

下薗:先ほどのお話のなかで気になったのは、飼う見込みの立たない動物の行方がどうなるかということなのですが。

平野井:今現在ホームページで40頭くらいの被災動物を公表しております。マッチング待ちのものを引きますと26頭くらいが新たな飼い主さんへの譲渡の対象になりますが、やはり老犬などが残ってしまいます。担当者としての希望は、公表されている上から順番にどんどん貰い手が付いてくれることです。他の団体さんも多くの動物を抱えて苦しんでいると思います。飼い主さんは御自身で飼えない状況が続いている。かといって現時点では、なかなか他の人に委ねる決心もつかない。となると、その動物たちは、このまま長期飼養になるのは目に見えているんですが…。被災ペット達には、やはり、もう一度温かい家庭で人間のそばで暮らしてほしいと思います。老犬でも、多少やんちゃでも良いよとお声がけをいただける方々が増えれば、また終息への道も開けるのかなと思います。

下薗:日本はまだ里親文化が定着していませんものね。里親として引き取るのが可哀想だという意識がある。ドイツなどはシェルターの環境がとても良く、そこに居る動物達はみんな幸せそうで、その幸せな表情のワンちゃんたちを迎えることによって里親である自分たちもハッピーになるという良い循環ができている。
幸せなワンちゃんとして迎え入れられるような里親の仕組を、われわれ動物に関わる者が作っていくことも責務の一つと思いますし、一方ではクレート訓練を始めとしたペットの社会性が絶対必要だということが身に染みますね。

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平野井:今回の原発災害で思い知らされたのは、やはり同行避難のためのクレートトレーニングです。クレートトレーニングができていれば、クレートに入れて一緒にいることができたのかもしれないなと思います。

下薗:そうですね。今回は震災だけの被災でなく長期的な避難生活となっていますので尚更ですが、時代は変化し、人と犬が一緒に生きていくことが当たり前になって来ていて、だからこそ人間社会で生きる家庭動物の社会性は絶対に必要ですね。そして、ヒトの救援が第一ですが、その上で家族の一員の存在となった動物達の早急な救援も行える体制作りを願うばかりです。

平野井:今回は本当に難しいことが多すぎました。行方不明者が見つからないと言っている状況の中で、一方では動物を助けてくれという声が聞こえ始める。これが同時期に発生しているわけですから、本当に対応には苦慮いたしました。

下薗:確かに人間があってこそなんだろうと思いますが、やはり共に生きるもの、特に家庭動物は人の作った存在ですから、その命や自然を守らなきゃいけないという責任意識は高めていきたいものです。これは私が愛犬家であり動物業界の者だからこそ、より強く思うことなのでしょうけれども。

平野井:日本という国自身の、災害時の動物レスキューの考え方が問われる事例だったと思います。国民の皆さんに現地の状況を理解してもらうこと。100%全てを救護できるかという問題も含めて、ここまではできたけれど、ここは困難だったということを御理解いただければ、もうちょっと違ったのかなと思います。

下薗:原発に関しては、本当に全てが杜撰でしたが、被災動物への対応も全く以て適切ではなかったのではと思います。でも適切ではないながら、なんらかのケアができ、命ひとつひとつが救われていることにも繋がっていく。
今回のことを礎に、国や行政が中心となって、連携の取り合えるネットワークができると良いですね。

IAC