中嶋:わたしたちは、縁あってNPO法人社会動物環境整備協会が認定する「ドッグライフカウンセラー」の資格取得に向けた講座の運営を4年前から取組んでいます。 講座の資料請求者や受講者から「大好きな犬と関われる仕事をするために受講したい」、「この資格を取ると、仕事に就けるのか?」といった問いかけがすごく多い。ドッグライフカウンセラーの育成事業を手がける以上、就職・就業の機会を作ることは責務だと思うようになりました。

ところが、俗に言うペット産業の市場規模は概ね3兆円程度と言われていて、大手の企業も参入はしているものの、多くは中小や個人の事業者が大半を占めていて、就職先は残念ながら多くはありません。 そのような中で、増加を続ける「犬」ではなくて、「犬の飼い主」さんの方に目を向けてみました。

下薗恵子下薗:「犬」ではなくて、「ヒト」にですか。

中嶋:仮に1,200万頭の犬が家庭で暮らしているとすると、日本の全世帯数5,000世帯と比較すると単純計算で25%。国民の4分の1が犬を飼っていることになります。

その一方、GDP(国内総生産)の内、個人消費は300兆円、それに25%を掛けると75兆円になります。つまり、犬を飼っている人の個人消費は最低でも75兆円あることになるわけです。合わせて犬の飼い主さんは経済的に余裕のある人が多い。そうすると、おそらく犬を飼っている人の個人消費は100兆円をくだらないのではないか、そのように考えたわけです。

そこで、3兆円のペット産業ではなく、「犬の飼い主さん」の消費市場100兆円の中にビジネスチャンスがあり、また新たな就業機会や就職機会を創出できるのではないか、このように考え、 3兆円のペット産業の市場と残りの97兆円の愛犬家消費市場をつなぎ合わせ、ペットを切り口とした関連市場を創造する取り組み、いわば実験のような事業なんです。

2~3年前にはペットカメラ(留守中のペットをwebカメラでリアルタイムに確認できる機能)なんてなかったでしょう。それが現在では商品化され、当社にプロモーションの依頼が来るし、販売店舗としてペット産業に関わるお店に依頼したいといった相談も来る。

また、マンションのコンシェルジェサービスに、ドッグトレーナーや当社の育成したドッグライフカウンセラーが雇用されるといったケースも出てきている。だんだんとペット業界とは異なる一般企業が関わり始めています。そうなると、そこに犬の知識を持った人材が必要になりますから、例えばですが動物の学校を出た人材は就職する場が増える。

下薗:そうですね、様々な企業がその間口を広げてくださると素晴らしいと思います。

中嶋社長中嶋:今、我々が考えている取り組みの一つとして、大手企業のマーケティングプランを展開する場所として、主にペット関連の店舗や事業者を提案しているんですね。これが国内では全部で36,000軒くらいになる。その中でトリミングサロン、ホテル、カフェ、この3種については特に、店舗と客とのコミュニケーションが密接でしょう。

たとえばスーパーで買い物をしてもレジを通過するだけですけど、サロンに行くと絶対に、(客と店員の間に)犬のことで会話が生まれる。コミュニケーションが双方向に取れているというのは、企業にとって非常に魅力的な要素になるんです。ペット産業と一般企業の接点を生み出すこともできますし、実際この方法を取り入れ、売上が飛躍的に伸びた企業もあります。

下薗:お店側にしてみれば、ちょっとしたサービスですし、企業からしてみれば、効果的な広告塔になりますものね。その体制が確立することで、双方にとって大きなメリットがあるのでしょうね。

中嶋:そんな風にして3兆円のマーケットを97兆円のマーケットの中に広げていく。そうすると今度は、現場に動物の知識を持った専門のスタッフが必要になってくる。それにより就職の機会が生まれる。そういうことを今やっていますね。


←前のページへ 1 2 3 4 次のページへ→
IAC