第3回

ペット業界の現状と未来
下薗 恵子 × 瓜生 敏一((株)ジョーカー代表取締役社長。全国ペット小売業協会理事)
2008年4月1日

ペット関連ビジネスを多角的に展開されている株式会社ジョーカーの瓜生敏一社長。ペット業者が爆発的に増えた背景にはどんな問題が潜んでいるのでしょうか。業界が抱える問題点と展望、同社が目指すペットビジネスに方向性について伺いました。

対談者プロフィール
瓜生 敏一(うりう としかず)
1936年生まれ。(株)ジョーカー代表取締役社長。全国ペット小売業協会理事。JKC全犬種国際審査員であるとともにJKCの各役職を歴任。
1954年より、各種ショードッグの飼育及び繁殖を始め、現在までに100頭を越すチャンピオン犬を作出する。(ケネル名:スタープライズ) 2005年には所有のトイ・プードルが全米全犬種NO1を獲得。日本人が全米全犬種NO1となるのは、AKC史上初の快挙である。


六本木ヒルズ店
株式会社ジョーカーについて
良質なペットの販売からしつけ、美容、洗練された用品のセレクトショップとして、首都圏に14のペットショップを展開する(株)ジョーカー。綱吉の湯ジョーカーズ・ダイニング(ドッグカフェ&レストラン)などペット関連ビジネスを多角的に展開。また、ジャパンドッグフェスティバル2007において、所有の繁殖犬(Mシュナウザー) が718頭92犬種のチャンピオンになるなど、ブリーディング、ショードッグの世界でも有名。

夢を与える存在としてのペットショップのありかた

山根先生 下薗:まずはペット業界の現状からお伺いします。つねづね実感することなのですが、ここ10年でペットショップの数は飛躍的に増えましたね。

瓜生:増えている最大の原因は、ビジネスとして「儲かる」というイメージが先行しているから。顕著なのは資本を持つ他業種の参入組で、これがここ10年非常に増えています。大手資本は、資金があるのは当然のことながら、経営そのものに対するノウハウもあるためビジネス展開も巧みでしょう。これまで参入できなかったのは、ペットを仕入れる流通ルートが一般化していなかったからですが、しかしここ10年程で生体の市場いわゆる「ペット市」を通して、経験がなくてもペットを仕入れることができる時代となりました。他業種からの参入はこれをきっかけとして急増したわけです。

下薗:そうした中で、今後の展望や問題点についてお聞かせくださいますか。

瓜生:ペット業界全体で見た場合、その展望は必ずしも楽観的とは言えないですね。飽和状態にまで膨らんだ事業者数が今後整理・淘汰され、いわゆる「勝ち組」と「負け組」が明確になってきます。いかにサービスの中身を充実させ、他と差別化を図りながら業務全体を魅力あるものに成長させられるかが、勝ち組として生き残る重要なポイントであり、最終的には、時代とともに多様化するお客様のニーズを、いかに汲み取れるかがより問われる時代になるでしょう。

下薗:ニーズを汲み取ることができない事業者は大小を問わず、ビジネスとして採算がとれなくなり撤退を強いられるということでしょうか。

瓜生:多角経営している大手は採算が取れなければ撤退も非常に早い。個人営業に近い要素で経営しているペットショップは簡単に撤退もできませんので、先細りの中で続けていくということはあります。しかし一方で、そういうところは賃貸による店舗展開が多いものだから、ランニングコストを考えても売上げが不足すれば撤退もせざるをえないでしょうね。

下薗:私どもも、生き物を扱う仕事がどこまでビジネスライクになってよいのか常に意識し、命あるものに対する責任を基に、様々な対応や取り組みを行なっています。

瓜生:それは重要なことでね。当社では生体の流通に関しては、独自でブリーダーのネットワークを構築し、その確かなネットワークの中で質の良いペットの繁殖をしてもらい、それを良いお客さまに提供するということを基本的なスタイルとしています。ペットを商品として扱うのではなく、私たちがペットとお客様の間に立つ「仲人」としてのポジションをしっかり意識していくことが大事だと考えています。これは社員にはいつも言い聞かせていることです。


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