先進国が辿ってきた道標

5

下薗:海外ではどのような道を辿って、今日のように動物看護職が確立されたのでしょうか?

白木:やはり同じような道を辿ってきたのだと思います。アメリカでは1960年に動物看護師の協会ができましたが、国家資格となったのは1986年です。じつに26年かかっています。

村尾:オーストラリアでは1980年代には既に各州に獣医看護師の協会があったんですよ。国家資格化しようと、動物看護の基準を確立するために、協会を統一して協議会を作って制度化したのです。国家資格化されたのは1998年です。
先進国を見てみると、アメリカもオーストラリアもまず動物看護師協会を作ってるんですね。協会を作らないと前に進まないということが良く分かります。

課題と解決策は?

下薗:これから立ち上げようとしている動物看護師協会では、職域を明確にする為の法の整備とスタンダードの確立(カリキュラム)、VTの国家資格化が課題なんですね。

村尾:動物看護師協会が立ち上がると、動物看護師育成の為の教育機関に基準を設定して、教育カリキュラムのスタンダード化をせまってくると思います。国家資格化にはカリキュラムが一番大事になってくるんですね。
今、全国で動物看護を教える教育機関は、大学、短大、専門学校、無認可校合わせて約340校もあるんです。これだけ多いとどこがいい学校だか分からない。だから何かしらの基準を設けて選別してくると思います。

下薗:動物看護師が夢と未来のある職業だということも、私達が若者に伝えていかなければなりませんね。それから現役の動物看護師さんたちにも伝えていかなければ。

清山:動物看護師はこれくらい盛り上がっているんだな、この業界が伸びているんだな、ということを高校の進路指導の先生にも伝え、目標を持った若い人に志望してもらえるような良い循環を作りたいですね。

村尾:そのためには僕たちが声高に叫ばないといけない。

これからの動物医療業界

5

清山:動物看護師という職業の質は確実に向上して伸びています。時代は変わり必要性が高まっているんですね。これから動物医療というのは眼科、外科・・・などと細分化され、動物看護師も専門分野に特化していくと思いますよ。高度化・確立化されていく動物医療の中で、命と命、心と心で向き合う動物看護を、全国の動物看護師と目指していきたいですね。

白木:この業界を見ると理由は様々ですが3年前後で辞めてしまう方が多いように感じます。これは仲間として非常に悲しいです。問題というのは仲間と話すことによって解決することが少なくありません。学会に行ったり勉強会に参加したり、自分が動けば動くほど支えとなる仲間は増えていくので、これからこの世界に入ってくる方には行動力をフル活用して頑張ってほしいと思います。私自身も仲間と一緒に国家資格化に向けて頑張りたいです。

村尾:これほど夢のある、そして動物と飼主さんに尽くせる仕事っていうのはありません。現場で僕達と一緒に新しい時代を作っていけばいいんです。未来を作るのは自分自身であり、それで進みたいと思うのならどんな形であれ、茨の道は花咲く道に変わるんですよ。

白木:反対意見があることは、正しく議論されていることだし、それだけお互いが伸びていく可能性があるんですよね。

下薗:まず一歩を歩み出すことが必要ですね。私は教育機関を運営するものとして、積極的に応援していきたいと思います。この問題に関して色んな考えがありますが、人と動物が共に豊かに暮らせる社会の実現を目指すところは一緒だと思うから。

最後に
今回参加していただいたゲストのみなさんは、最終的に動物のためになることを一番の望みとして、動物看護を国家資格化にしたいとおっしゃっていました。
この純粋でひたむきな思いをしている方は全国にたくさんいらっしゃると思います。動物が好きで命を助ける仕事に就いた、その気持ちに誇りを持って、みんなの心をひとつに前に進んでいけたらと心から思いました。
←前のページへ    
IAC