学校法人シモゾノ学園の理事長兼校長。動物が生きる喜びをかみしめることができる社会、人と動物が本当の意味で共存共栄できる社会を目指す愛犬家。
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日本の動物医療、動物看護師の現状
下薗:2008年2月の日本獣医師会学会年次大会において、「今後の動物医療における動物看護師の役割、資格制度化の確立に向けて」をテーマとしたシンポジュームが開催されます。そして動物看護師協会の立ち上げが提案されると伺っています。動物看護師さんたちが生きがいを持って動物医療に従事できる環境ができたらどんなに素晴らしいでしょう。現在の日本の動物医療、動物看護師さんの現状についてお話を聞かせてください。
村尾:講演会等で全国を回っていますが、高校生が動物看護師に憧れても、今は資格も確立されていないし給料も少ないという理由で、進路指導の先生の中にはこの分野を勧めづらいという現状があるんですね。でも実際は夢も希望も未来もある仕事なんです。進路指導の先生たちに実情を伝え、誤解を解いていかなければならないと感じています。清山さんが勤務されていた九州地区の実情はいかがでしたか?
清山:看護師の処遇面では、地方は更に遅れていました。就職活動でさえ苦労するんですよ。動物看護師はお手伝いさん的と誤解している獣医師も多く、お給料も月6万円とか。モチベーションを高く持った人が一生懸命やろうとしても生活していけない。
下薗:なぜ日本では動物看護師の地位が評価されていないのでしょうか?
村尾:それはもう、開業獣医の「ちょっとこういう部分でお手伝いをしてくれる人がほしいな」って生まれたのが動物看護師だからです。それがそのまま来てしまったものだから、医療として歴史が積み重ねられていく中で、獣医師と動物看護師の職域に混乱やとまどいが生じたわけです。
下薗:獣医師は動物看護師に、専門職としてのレベルの高さは求めていないのですか?
村尾:いいえ、求めていますよ。そういう院長がいる病院は流行っているし、伸びている。それは動物看護師の役割に価値を見出して、彼らがいないと優れた動物医療はできないと院長が理解しているからなんですね。獣医師とは異なる独立した専門職として認めている。
白木:獣医師と動物看護師の仕事の役割が明確に分かれているということは、メリットが確実に動物に還っていくんです。
下薗:うちのリッキー(愛犬)は退院する日に「居心地がいいから、おうちに帰らなくてもいっか~♪」っていう雰囲気になっていてね(笑)、元気になったのはもちろん獣医師さんのおかげであるけれども、優秀な看護師さんたちがすごく心を込めて看護していただいたおかげだな、って思ったんですよ。
海外の動物医療、動物看護師の様子
下薗:資格制度が整っている諸外国では、動物看護師の仕事はどのようになっていますか?
白木:私はニューヨークの動物病院で働いていたんですけど、VT(動物看護師)の地位と役割がきちんと確立されていました。VTが事前に問診を行い、獣医師が診察して診断や治療方針をカルテに書くと、基本的にそこから先はVTの仕事になります。
例えば、採血をして生化学検査をしておいて、とか。だから獣医師はすぐに次の診察に入れ、スムーズな流れがありました。
日本では動物看護師の職域で迷うことや、葛藤の中で常に仕事をしている状態なのでとても混乱します。
また、アメリカでは家族を持った男性のVTも活躍していました。最初、当然獣医師だと思ってドクターと呼んだら、「僕、VTだけど。」って言われたこともありました(笑)
村尾:イギリスでは国家資格です。具体的に細分化されていて外科、歯科などの分野ごとに専門動物看護師がいます。そのライセンスのバッチをもらうとね、非常に誇り高き名誉で、一般の人からも高い認知を得ているんですよ。
白木:アメリカよりも動物看護の歴史が長いんですよね。
村尾:はい。ナイチンゲールがクリミア戦争で活躍する前に動物に対する命の尊厳の価値基準が設けられています。1824年にはRSPCA(英国動物虐待防止協会)ができています。
現在の一般的な動物園ができたのもこの頃ですしね。
そうだ、オーストラリアではね、人間の医師より獣医師の方が人気があるんですよ。なんでかな、って思って聞いたらみんな口を揃えて「だって動物が多いでしょ?」って(笑)