高齢者社会とホースセラピー

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下薗:これからの高齢化社会に向けて、健康に歳を重ねる、元気に歩けることが私自身の望みでもありますが、例えば、私のようにウマにあまり乗ったことがない者がいまから始めることもできるのでしょうか。

川嶋:はい、多くの方が始めています。乗馬されている方には高齢者も多いのですよ。高齢者ではありませんが、50代、60代からウマに乗り始めることは少なくないです。
 若い頃に経験がある方ですが、90歳近い方も乗られているのを聞いたことがあります。介護予防でウマに乗り、身体的なアプローチとして、体幹や筋肉を刺激するので、転倒予防にはなると考えられます。

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下薗:魅力的ですね!お話を伺い、腰と足の筋肉を鍛えたいので、私も始めたいくらいです。

川嶋:お年を召された方の難しいところとして、持病や骨粗鬆症という体の変化の問題があります。ウマに乗るプログラムをする際、落馬しないよう特に注意深く行っています。また、体調を管理するためと高血圧等の検査を行い、安心して乗馬できるようにしています。

下薗:落馬の危険性は常にあるでしょうね。

川嶋:落馬の可能性が低いウマを使うようにはしています。ウマの性格の見極めや行き届いた調教をしっかりと行い、調整しています。背の低いウマを選択することもあります。

下薗:その見極めはインストラクターの腕次第ですね。

川嶋:はい、見極めに迷うと事故に繋がる可能性があります。大切なのは、この状態のときにここでやめます、と基準を作り、セラピーにいらした方に伝えられるか、その判断が特に重要です。ウマの精神面も考慮して、状況を利用者に説明して、セラピーを中止することも大切であり、そのために代替馬や別の方法のセラピーを準備しています。セラピーでは実際に乗馬をしている時間はそんなに長くないのですが、色々なことが起こります。インストラクターが状況をコントロールすることも必要です。

シモゾノ学園の学生に向けて

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下薗:最後に私どもの学生に向けて、何かお言葉をいただけましたら幸いです。

川嶋:自分ができること、得意なことを見つけ身に付けて、どう自分の価値を高めいくのかに取り組まれてください。例えば、この犬種なら得意ですとか、この様なヒトを対象とするのなら得意ですとか・・・。それぞれ得意とすることは違うでしょう。他人と違っても構いません、自分が得意とすることを2年間の学生生活の中で見つけてください。
 もうひとつは、技術を身に付けてください。知識も技術も他人が奪い取ることができない、自分の意思で使うことができるツールです。時間と体力に余裕のある今、貪欲に努力して、将来を考えるときの選択肢を広げられてはいかがでしょうか。それが結果として、20年30年後、振り返った時に、あの時に自分のできることを見つけておいたからだと思えると思います。

下薗:ありがとうございます。それは私たち指導する側もわきまえなければなりませんね。どうしても学校では、全員を一定ライン以上にしようと努力するものですが、そのなかでも学生個々の秀でたところを育てたいと改めて気づかせて頂きました。川嶋先生、本日は貴重なお話を伺わせていただきまして、有難うございました。

最後に

最後に
今回は東京農業大学農学部にて動物介在療法を専門にご活躍されている川嶋先生にお話を伺いました。
動物介在療法の中でも、特にウマを用いるホースセラピーで対象者にアプローチすることで多大な恩恵を受けることを改めて実感しました。
ホースセラピーの対象者がその効果、恩恵を維持し、継続して社会に関わり続けられるように就労支援の一環としても日本においてホースセラピー活動が普及することを願います。
IAC