相手を理解させ、引き込む力をもった人材の育成

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下薗:シモゾノ学園でも動物園や水族館に憧れて、その夢を目指している学生たちがいますが、その学生たちが活躍するには、やはり土居先生のおっしゃった「相手に理解をしてもらえる、相手を引き込む力や説明力や紹介力をもった人材」になっていることが大切ということでしょうか。

土居:私は常に「人が好きでないとダメ!」と言っています。

下薗:なるほど!たしかにその通りです!

土居:人が好きでないと、どんな仕事でも難しいと思います。
 誰かに伝える、解説するということは、自分の知識を披露することとはちがいます。相手が興味あることをつかみ、興味を引き出してあげることなのです。

下薗:一方的に話して知識を伝えるのではなく、逆に聞き出すようなスタイルになりますよね。

土居:そうです。だからこそ、人が好きでなければできないことです。人の顔を見て、きちんと会話ができないような人間では、務まらないと私は考えています。

下薗:そのとおりですね。

土居:一般的な試験制度では、そのような面をはかることができません。
ただ、上野動物園では面接を3回行います。面接をかなり重視しているのです。
傾向としては、女性は面接が上手ですね。

下薗:そうなんですか!

土居:熱意が伝わってくるのです。男性は、まじめな面も大きいのかもしれませんが、比較的淡々と話す方が多い。それに対して女性は、「こんなことをやりたい!」という自分の熱意を上手に話すことができる。受け取り側の印象もまったく変わってきますよね。熱意も大事だと私は思っています。

下薗:熱意が伝わると、こちらの心が動きますよね。

土居:ほかには、どんなことでも興味を持つ姿勢が評価されます。動物業界ではあっても、動物のことだけではダメです。文化的な面もあり、知っておくべき事柄がたくさんある。他分野に苦手意識を持たない姿勢は必要ですね。 実は私もパソコンがあまり好きではない…という面をもってはいますが、それでも取り組んでいますよ。

下薗:なにに対しても、苦手と逃げてばかりではいけませんからね。
最後に、動物業界を目指す方々へのメッセージをいただけますか。

土居:アイディアというものは、ひとりで考えていてもなかなか出てくるものではありません。ちがう分野の方々とのコミュニケーションの中で生まれることが多いものです。
動物業界を目指す方々も、動物のことだけではなく、ちがう分野の多くの方々と話をして新しい発見をしていってほしいです。
動物園でも、動物の専門家だけで仕事をしているわけではありません。その他の分野の方々と取り組む仕事がたくさんあります。そのときに意志疎通をして、ひとつのものを作りだす力が必要となってきます。
ぜひ、がんばってもらいたいですね。

下薗:ありがとうございます。
シモゾノ学園でも常々、動物業界を目指す上では、「動物が好き」という気持ちよりも「人が好き」という気持ちの方が上にあるくらいの勢いでないと動物の仕事はできないと伝えていたので、土居先生からのメッセージを普段の教育や就職指導でもより強く訴えていけます。
私が勉強させていただくことがとても多い対談でした。
今後ともぜひ、ご教授よろしくお願いいたします。

最後に

最後に
今回は土居利光園長に、動物園飼育員を目指す皆様にも大変有意義でためになるお話を伺うことができました。
動物に関する基礎知識だけではなく、その知識を一般の方に分かりやすく伝える技術や、周囲とのコミュニケーション能力、そして熱意。 お客様にもスタッフにも信頼される人材の育成に、よりいっそう力を入れていく必要を感じます。
IAC