動物看護師の公的資格化への道のり

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下薗:先程、教育機関の方から動物看護師に担わせてほしい業務の要望をしても宜しいというお話を頂いたのですが、形としては、どのように進めて行けば良いのか教えて頂けますか?

山根:動物看護師の公的資格化のためには、専門職業人としての仕事の分担も、今後大いに議論していくべきだと思います。特にチーム動物医療の確立のためには具体的な内容を検討しなければなりません。

細井戸:最終的には権利調整ですから。下薗先生はじめ動物看護教育に関わる人々や動物看護師自身の意識改革によって、動物看護師の職域は大きく変化すると思います。教育機関は、動物看護師が今後担うであろう職域に関する教育をしっかりと行い、獣医師会に職域拡大に関する具体的な要望を提言し、獣医師会はそれを受けて、「こういう理由でそれはさせられない」「こういう理由でそれはやって戴きたい」と判断し、回答することになると思います。
こういう事をどのように議論していくかということから始めましょうと山根先生、太田先生はおっしゃっているのだと思いますよ。
統一認定機構が実施する認定制度については、多くの獣医師に認識していただけるようになったと思います。昨年に実施された協議会主催の認定試験受験者数より今年の受験者数が千名近く増えたという事がそのことを明確に示しています。教育機関の関係者の方々がやってきたことにもっと自信を持っていただきたい。
そして、この認定動物看護師制度を国家資格化につなげるには、関係者が今後も大同団結して、それぞれの立場で努力をし続けるかという事にかかっていると思います。

太田:これはかなり大きな流れになっていますよ。農水省が今までと違い相当支援していますよ。

下薗:それは本当に有り難い事です。

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細井戸:今までの1.5倍以上になる2400時間ものコアカリキュラムを一生懸命、教育していくのですから、その教育を受け卒業した人たちがキチンとした処遇を受けられない、或いは職域をひろげられないでは意味がありません。教育機関はどんどん意見を言って下さい。

下薗:我々専門学校の方から、この様な業務を動物看護師にやらせて欲しいと、どんどん獣医師会に提案していって宜しいという事ですね。また、それには教育の質を向上させるため、どのような教育をして行かなくてはならないのかご指導もいただけるということですね?

山根:国家の専門職になるのですから当然ですよ。

細井戸:動物看護師を目指す人々が様々な動物の体の仕組み、機能、しぐさなどを真剣に学び、動物に対する興味や魅力が感覚的なものから学術的な裏付けのあるものに変わっていくと、犬や猫などの家庭動物だけではなく、他の動物に対しても興味を持つようになり、産業動物や実験動物、野生動物の分野にも進出できるようになると思います。解剖学・生理学・繁殖学や行動学の基本を学ばずに動物看護師になって欲しくはないし、動物に関する基礎的な知識をしっかりと身につけることで、動物看護師の職域はどんどん広がっていくと思います。国家資格化に向けて、教育機関は動物看護師を目指す学生に対して、基礎をしっかりと体系化して、教育して欲しいと考えております。

山根:パピーの教育、栄養指導、老犬の扱い方、ワクチンの説明や産業動物の予防業務などは動物看護師さんにピッタリの仕事です。獣医師とチームを組み効率よくやる仕事は多数あります。これらをカリキュラムに入れてキチンと形にして行ってほしいです。

下薗:新しいコアカリキュラムもその辺はしっかりと取り入れようと努めています。
やはり我々教育機関の意識改革が重要で、まずは我々自らが教育の在り方、目的を大きく変えなければならないと思います。太田先生にもご協力戴こうとしているところで、教員のブラッシュアップをぜひともしていくべきだと考えております。

山根:今後、動物看護師が国家資格になったら、雇用の面でもしっかりとしてくるでしょう。

下薗:はい、やはり専門職としての意識を芽生えさせなくてはならないと思っております。

IAC