第14回

グローバルに活躍できる人材を育てる

2012年11月1日

今回はナルホド対談特別編として、シモゾノ学園理事長、下薗恵子がアメリカ・ロサンゼルスでカリフォルニア州認定グルーミングスクール "4Dogs Grooming Academy"を経営する山田かおりさんをお訪ね致しました。
この学校にはシモゾノ学園 国際動物専門学校の卒業生、金井寛貴さんも在籍しており、お二人に海外での経験や日米の違いなど、様々なお話をお伺いしました。

対談者プロフィール

山田 かおり
山田 かおり(やまだ・かおり)
出身地 兵庫県神戸市
1996年 阪神大震災をきっかけにアメリカへ渡米
1998年グルーミングサロンをオープン 
2002年カリフォルニア州認定グルーミングスクール”4DogsGroomingAcademy”を設立
スクールは10年目を迎えました
金井 寛貴
金井 寛貴(かない・ひろき)
出身地 群馬県伊勢崎市
2007年3月 シモゾノ学園国際動物専門学校卒業後、同年4月7日渡米 4DogsGroomingAcademyに入学
その後、数々のグルーミングコンテストに入賞・現在はサロン経営学の勉強に励みながらドッグショーにも参加し技術を磨く毎日です

日米のグルーミングの違い

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下薗:本日は、4Dogs Grooming Academyの山田かおり先生をお訪ねしています。そもそも先生が日本からアメリカに渡られたときのエピソードからお聞かせくださいますか。

山田:私が渡米して、かれこれ15年になります。15年前に阪神大震災があったのですが、そのころ私は神戸でペットショップを経営していました。 今でもはっきりと覚えているのですが、あの震災のあった前の日に、毎月来てくださるご家族のお客様が来店していまして、その客様を「じゃあ、また来月ね」と最後に送り出し、店のシャッターを閉めて……、そのあくる日ですね。

下薗:その朝ですね。

山田:朝です。お店のほうは半壊ぐらいで済んだのですが、ほんとに周りすべてが全焼。最後に送りだしたあのお客様も、家族全員亡くなられました。

下薗:そうですか……。

山田:はい。ワンちゃんも亡くなられて。もうそのショックと、人間って一瞬にして死んじゃったら何もできないのだって。ほんとに、あの震災が私の人生を大きく変えた出来事でした。 アメリカに行って、もっとペットのこと、グルーミングのこと、ドッグショーのこと、いろんなことを学びたいという昔からの夢はありました。でも忙しさにかまけて先延ばしにしていたのですが、「もう今そんなこと言っていられないんだ。今行かなきゃ!」って決心して。あの地震のあった半年後に、単身渡米いたしました。

下薗:何か、アメリカにご関係はあったのですか?

山田:なかったですね。

下薗:そうやって、手探りで始められて。でも着実に実績を積まれましたね。

山田:「死ぬ気になれば、人間なんでもできるのだよ」っていうことを本当に肌で感じました。最初はサロン系のお店をはじめたのですが、その後にトリマー養成の道に進みました。

下薗:それはどういう理由からなのですか。

山田:自分のワンちゃんを散歩に連れて歩いていたら、近所の方たちが「あら、あなたの犬、綺麗ですね。どこにグルーミング連れて行っているの?」って言われて。 「いや、私が実はグルーマーなのです」っていう話をすると、サロンのお客様がどんどん増えていって。

下薗:なるほどなるほど。

山田:そんなある日、近くのグルーミングショップで働いているグルーマーが「なんであなたの店こんなに流行っているの?教えてほしい」と訪ねてきたのです。そこで日本のハサミの技術を教えると、「ワァー、すごい!」なんてことになり…。

下薗:うーん、なるほど。すごいですね。

山田:そのうち親切な方に、グルーミングを教えるのにもライセンスを持ってないと法律で駄目だって言われました。そこで弁護士さんに相談して、カリフォルニア州の認定校として正式なナンバーを頂きました。

下薗:今度は反対にお墨付きが付いた訳ですね。それではアメリカに行って特に学んだと感じられることは何でしょう?

山田:ハサミだけではなく、様々なグルーミング用具を使ってスピーディーに済ませる、アメリカ流の犬に優しいグルーミング法を学びました。

下薗:アメリカのグルーミング法は生産性だけを追求しているわけではなく、高齢犬をトリム台の上に何時間も立たせておくのは、本当は好ましいことではない点にも対応していますよね。

山田:はい。最近では医学の進歩でかなり寿命も延びて、老犬が増えていますので、やはり老犬に優しい、素早いグルーミング法が重要だと思います。 "スピードグルーミング"と最近では言われておりますが、スピードグルーミングと聞くと、なんか手抜きっぽく聞こえるじゃないですか。

下薗:はい。そうかもしれませんね。

山田:でも実はそうではなく、アメリカのグルーミング用具がとても効率よく作られているということと、その器具をちゃんと使いこなせば、労力も減り、犬への負担も減るし、グルーマーやトリマーへの負担も軽減する合理的な手法だと思うのです。

下薗:わかります。でも日本ではまだ少し、その感覚は遠いかなと感じます。 どうしても形から入るし…そうするとやはり見た目の可愛さが求められるケースが多いですね。だから器具をうまく使いこなすということよりも、早くハサミを動かすというところに重点が置かれているのかもしれません。

山田:そうですね。ただ、私が一つ感じたのは、例えば歯医者さん、私もこのあいだ虫歯の治療に行ってきたのですが、虫歯治療イコールレーザーで「ピピピ」の一瞬で終わりです。「え? 終わったの?」って。

下薗:えー! それは羨ましいですねー。

山田:はい。私、「え? この医者ヤブ?」って思ったのです。「何にもしてないじゃない」と伝えると「何言っているの、君。時代遅れだよ」って言われました。「時代について来ている?」パンパンって肩叩かれて(笑)。

下薗:研究しているんですね。

山田:アメリカはどんどん医学が発達しているし、ペット産業もどんどん変わっていくし、日本にいると時代に取り残されちゃう気分に時々なってしまいます。

下薗:やはりいろいろ見習うところはありますね、アメリカには。

IAC