民間と国が一体となり、動物救護ができれば

1

下薗:私どもは震災直後に、長野県の清里にあるシモゾノ学園の研修地と犬の管理施設をシェルターに利用されないかと救援本部にご提案させていただいたのですが、なかなかお返事が来なかったのです。なぜだろうと思っていましたが、実際に平野井さんにお話を伺って、会えなくても側にいたいという飼い主さんの思いと、動物たちも慣れ親しんだ場所にいた方が好ましいのだろうということが分かりました。当事者でないと分からないことが多いと知りました。また、シェルターの動物たちがとても人懐っこいと感じましたが、きっとボランティアさんが誠心誠意お世話をされている、温かな関わりをされているお蔭さまなのでしょうね。

平野井:今回の対策で、人手、物資、資金というのは、必ず必要になるものだと思いました。まず人手については、当初、被災地の動物救護に割ける人手がありませんでした。出先の各保健所の職員は、避難所の支援や外部被ばくを調べるためのスクリーニング検査などでいない。当初動けたのは、本庁の動物担当の人間で、私の他に係員が1人だけ…。
資金については、0からのスタートです。
物については、中央にある緊急災害時動物救護本部から餌などの支援をいただきました。
お金では本当に苦労しました。毎日毎日著名人や大手企業に寄附依頼のメールを差し上げたものの、いいお返事は来ませんでした。そこから人づてにでも伝わればと思っておりましたが、なかなか進みませんでした。ニュースで取り上げられた事をきっかけに、御支援の輪が広がり、なんとか乗り切ってこれました。順調に進むようになるまでは、本当に苦しかったですね。

下薗:当初、気づかず本当に申し訳ない気持ちで一杯です。私もその時に気づいていれば、お力添えしたかった。義援金は東日本動物緊急災害時救援本部にご支援をさせていただいておりましたが、大きな組織なので俊敏には動くことが出来なかったのだと思います。

1

平野井:大きなお金になればなるほど、正しいお金の使い方を判断しなくてはならないし、今回、国民の皆様からいただいた多くの義援金を福島だけに使うわけにもいかないでしょうし…。
今回の原発災害で、NPOも個人も団体も色んな活動家の方が動きだしましたね。それぞれ自分の資産を投じながらやっているわけでしょうから、本部としては区別するのは難しかったでしょうね。

下薗:大きな目的は同じでも、関わる人や立ち位置で、方向性が違ってきてしまいますね。動物救援だけではなく、大きな事故や災害が起こった後、国全体が一丸となって対応するのは難しいことなのでしょうけれども、被災を免れた私たちがそこで助力できれば。先ほど悪影響の問題をお話したITツールですが、良い方に展開することも可能だと思います。

平野井:われわれの反省としては、皆様が必要な情報を必要としている時期に提供できなかったことです。先ほどお話しした様に、少ない人員でこの業務を行っていましたので、手が回らないことも多かったと思います。通常の業務に加えて、この大規模災害の業務ですから、少人数で飲み込めるものではありません。しかも、1億~2億円近いお金が動くわけです。自分の背負っているものの大きさに押し潰されないように無我夢中で動いてきただけなんです。当然、自分たちの考えていたシナリオ通りには動かないことも多かったです。とにかく、無我夢中でした。

下薗:本当にご苦労の連続だったと思います。私共が第一シェルターから第二シェルターに犬の移動のお手伝いをさせて頂いた時、平野井先生が率先して動かれていて無言で黙々と輸送する犬をゲージに入れて運び出され、また到着したシェルターでも大汗を流して動いている姿を拝見し、ずぅぅんと胸に響きました。あの時はお昼ごはんを食べることを忘れて移動しましたね。全ての犬を第二シェルターに移動し、日が暮れかかってやっとお腹の空いていることに気づいて。美味しかったです。近くの食堂のから揚げ定食!!

IAC