動物園の新たな役割

増井:麻布大学の研究室との共同研究なんですが、お年寄りのグループと若者のグループにそれぞれ色んな場所に行ってもらって、唾液中のストレスホルモンや血圧なんかを調べた結果、最もストレス緩和に効果的なのは動物園であるという結果が出たんです。
それと、これは横浜国立大の研究ですけど、緑被率の高いところに住んでいる人は、精神的疾患が少ないという。これも分かりますよね、なんとなく。

下薗:はい。

増井:当園の、何のためにズーラシアに来たかというアンケート調査では、「健康のためにズーラシアに来る」という人がずっと伸び続けているんです。平成15年頃の記録だと1割ぐらいだったのが、今は3割ですよ。50歳以上の人は半数が健康のためにうちへ来る。

下薗:健康志向なんですね。またズーラシアは立地や周辺環境が、健康志向の方にすごくマッチしてらっしゃいますよね。

増井:今そういったことが求められてる時代なんですね。高齢者になったって自分の健康は自分で守らなきゃという意識が高くなっている。これからの動物園はその辺りの役割を担うことで変化していくことが非常に大事になっていくと考えています。

増井 光子先生

下薗:最後に、若者たちに先生から何かメッセージをいただければと思います。

増井:視野を広く持っていただきたいです。それから、感謝する気持ちですね。人間て欲張りで、色んなものをもっと、と望むんだけど、犬たち猫たちを見てるとほんの些細なことで本当に満足している。それから、動物は決して争いは好みません。

下薗:そうですね。

増井:ただ犬猫はかわいいとだけ思うのではなく、もっと広い視野で、地球上の生き物と共存して成り立ってるということを考えていただきたいですね。よく自分のペットがかわいくて、他の動物が眼中にない人が結構いるんですよ。例えば、以前、放し飼いにしてる猫が天然記念物の小鳥を捕ってるというのに、どうにかしようとしない人もいました。けれどもペットと人だけが地球を独占してるわけではないんです。犬や猫を大切にするという気持ちは大事なんだけど、世話のしかたをきちんと知って実行して、ほかの生き物に弊害がいかないようにしてほしいですね。

下薗:私もまたあらためて気が付かせていただくことが多かったです。本当にありがとうございました。今後ともいろいろとご指導いただきたいと思っております。ぜひともよろしくお願いいたします。

最後に

最後に

日本の動物行動学の先駆けでいらっしゃる増井光子先生のお話は、動物園という世界に留まらず、すべての動物への愛情が感じられました。私たちも飼育員を育てる立場として、先生の理念を多くの若者たちに伝えていかなければならないという使命を痛感しています。
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