飼育員という仕事について

増井 光子先生

下薗:私どもの学園でも、飼育員を希望する学生が非常に多いのですが、なかなか狭き門です。先生は動物園の園長先生という立場として見ると、どういった人だと飼育員になれる可能性があるでしょうか。

増井:人間が好きじゃないと駄目ですね。動物園はサービス業ですから。お客様あっての動物園です。

下薗:やはり、対人間ですね。

増井:それに、自分1人で動物を世話しているわけじゃないんですね。皆チームですから、自分が休んだ時には誰かに担当動物を世話してもらわなきゃいけない。もちろん逆もしかりです。それから共同作業というのも結構あるんですよ。

下薗:協調性がないといけませんね。チームを組むということは、担当の動物もローテーションで回っていくんですか?

増井:ええ、それは担当替えというのをやります。一つの動物に深く長く担当するのも悪いことではないですが、それだと他の動物のことが全然分からない。だからどの動物にあたってもきちんと世話ができるように、担当を替えていくのです。

下薗:一人前の飼育員になるには、どれくらいかかるのでしょう。

増井:昔は10年かかるといわれましたね。ですから以前はそれがネックとなって、女性飼育員が育たなかったんですよ。昔は女性は結婚や育児でやめる人が多かったのです。

下薗:でも今は、辞めてしまう人も少なくなってきたわけですね。それは、この動物園に魅力があるということになるのでしょうか。

増井:ええ。それと職場の雰囲気なんですよね。産休や育児休暇を取れる環境を作りだすことも大切です。うちは多い時に6人位産休だったこともあります。

下薗:その時は補充をせずみんなで協力し合っていたんですね。やっぱりそれは大事なことですね。女性と男性のスタッフの比率はどのくらいなんですか。

増井:うちは半々です。でも今やもう獣医職では、大学自体でも女子学生のほうが多いんですから。ただまだまだ地方の小さい動物園へ行くと、大変そうですね。

増井 光子先生

下薗:仕事のハンディなんかが女性にはあるのですか。

増井:今はだんだん機械化されてきているので、前のように力仕事でのハンディというのはあまりありませんが、ただ体力は必要ですね。だから大学生なんか、実習にくると最初は筋肉痛になります。

下薗:そうですか。挑戦させていただく私どもの学生たちに、どんなことを習得させておくべきでしょうか。

増井:仕事として割り切ってきちっとできる人ですね。それから、人とうまく共同作業ができる人。フットワークのいい人。あと大事なのは自分で物事を考えられる人。
どの職場でもそうですが、昔は先輩の仕事を見て、それを盗んだものですよね。それが今はなんでも、教えてもらえると思っているでしょう。でも、動物を扱う場合、文字や言葉では伝えにくいコツとか勘といったものがありますからね。

下薗:そうですね。それはそういった『与える教育』というシステムがあるからでしょうね。私どもの学校でも、『自分でやるべきことを判断する』という訓練をやっていきたいと考えています。

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